私はあまりテレビを見ないのですが、なるべく見逃さないようにしているのがNHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」なんです。

最近、放送された回の出演者は女優、宮沢りえ。一ヶ月に及ぶ舞台稽古に密着した内容でした。


番組の中で「もっと自分を疑えよ!」という言葉は、宮沢が慕う世界的演出家、故・蜷川幸雄さんが稽古場で発したひと言だったそう。

この番組での宮沢りえの思考をシェアしたいと思います。



『作品に携わると決めた以上、ゴールは無いわけですよね。ここまでいけば100点、っていうのはないんですよ。どこまでも上を目指せる。だから、「これでいいのかな?なんかもっと、あるんじゃないかな?」とずっと思っていて。



あるとき、蜷川幸雄さんが稽古場で、ある俳優さんに、「もっと自分を疑えよ!」とおっしゃったんですね。その言葉が、はっとさせられたというよりは、「肯定してもらえた!」っていうか。

自分をずっと疑って、「それでいいのかな?」「もっとないのかな?」って、手放しで喜ぶ瞬間がずっと無い仕事というか。でも、それをすごく肯定してもらった思いでいっぱいだったし、「自分を疑え」っていう言葉は、私にとってエネルギーになりました。』



稽古の期間に宮沢りえが葛藤しているのです。

夏川という女性を演じていて夏川の心理をシチュエーションごとにとっても具体的に想像しながらセリフ、表情などを突き詰めてる。

舞台と映画の違いの一つは、舞台の場合、初日の幕が上がるまでに比較的長く稽古を積む期間があることだそうです。

稽古の序盤においては、“正解を早く出す”ことが、よい結果につながらないと考えているそう。

役者の中にある、“衝動”をもとにさまざまなことを試して、挑むことで、より豊かなものが育まれていく。その先に何かが生まれると考えて挑戦するから、失敗することが多いそうです。

この宮沢りえの取り組む姿勢に、おこがましいですが私はとても共感しました。

 

◾ 店をオープンして以来9年間、担当させていただいている顧客のA様のお話です。

 

A様はヘアスタイルを大胆に変えることはありません。あごラインからリップラインぐらいの長さでいつもスタイルをオーダーされます。

またスタイリング剤をつけることを嫌われます。『朝起きて、何もしなくてもまとまる』これが理想な方なのですが・・・。

毛流れ、生えグセの影響で左サイドがどうしてもハネるんです。あまり軽くしない方法でやらせてもらえるんですが、どうしても、ある部分だけとっても軽くしたい方なんですね。

難しくいしているのは、とっても軽したいところと、レイヤー、前髪の長さ、サイドのハネを改善しながらヘアデザインとして調和がとれているか。

 

この9年間、試行錯誤をしてきました。

 

1mm単位でパネルごとに長くしたり、ある時は斜めにスライスをとったり、斜めのスライスの角度を5度傾けたり、ハサミの進入角を変えたり、コームのテンションを変えるために、荒刃のコームに変えてみたり、毛量調節のやり方なんて、もうホントにいろいろ試しました。

うまくいった時もありましたが、なんでうまくいったのかをロジカルにしたくて、またやり方を変えるんです。

 

そうするとうまくいかない。どうしていいかわからなくなって。

 

もうこれ以上、技術的に選択肢がなく「もう少し、短くできないですか?そうすると新しいことができるから。」と提案させていただいたこともありましたが、答えは「NO!」で。(w)

与えられた環境(髪の長さ)で私はまた取り組むことに、、、、

このA様に何もしなくてもハネないようにカットできたのが実は最近なんです。ほぼ、9年かかりました。時間かかりましたー。

カットって奥が深いです。途中であきらめて、「パーマをかけてください」とかアイロンの巻き方をレクチャーして対応する選択肢もありました。

でも、それをA様が私に許さなかった。(w)ほんとにA様に感謝です。美容師としてのスキルが上がった瞬間でした。

 

ヘアスタイルを大胆に変更せずにおられる顧客の方は多く、皆様に何がしらの技術的アプローチは毎回変えてやっています。

だから、微妙に違うでしょ。「同じヘアスタイルで」と言われても、私の脳みそがそれを許さない。

 【宮沢りえ的にいうなら”衝動”、私の場合は脳みそ。 脳みそという言葉のセレクトにボキャ貧な自分にがっかり(w)】

別のまとまる方法があるはず、この質感調整のほうが更にフィットするのでは、、、、、、脳みそが常に何かを探してしまうんです。

 

宮沢りえの「何かが生まれるんじゃないか?」という姿勢にとても共感したのは、A様のことがあったこのタイミングだったからかもしれません。

どんな職業でも、どんな立場であろうともゴールはないんですよね。

 

ゴールが見えたらハサミを置くとき。美容師としての現役引退。向上する意欲がなくなっているんですから。お金をいただくにふさわしくないでしょ。

たまに「菅原さんって職人だよね。」って言われるけど、自分の普通の感覚が宮沢りえとよく似てたのでおこがましいですがシェアさせていただきました。

 

「もっと美容師として自分のカットの技術を疑えよ!」

 

P.S.

番組恒例の宮沢りえへの質問。

「あなたにとってプロフェッショナルとは?」

”対相手”が生まれることですね。

まず、相手に対してホントに誠実であること。

そこだけは誠実にいるっていうのが、本当のプロフェッショナル。

 

おもしろいのは舞台最終日のあと、楽屋で言い直してるんですね。

 

プロフェッショナルとは?っていう質問で、

あれも言って良かったなと思いますけど、

やっぱりそのことに対して、身を削る覚悟が

ある人のことをプロフェッショナルって言うのかなってすごい思いました。

今回改めてそれを突きつけられた感じがします。

 

発言そのものもがステキなんですが、、、発言より興味深いのは言い直してる、考え続けてる。

プロですねー!

 

しかし、稽古中の宮沢りえのヘアスタイル、乱れてたなぁ。というより、かなりボサボサだった。あの感じで仕事できるって役者なんですね。キレイだからいいけど一般人ならあの見え方はしないでしょうね。芸能人には美容師(スタイリスト)がやっぱりついてるんですよ。一般人のほうが努力しているんじゃないのかな。

 

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morie sugawara

morie sugawara

代表 菅原 守英 ・・・・・・・・・ 2008年、ヘアサロン《へアーカミシ》を立ち上げる。「質の高い仕事をするためには時間をかける!」をモットーに完全マンツーマンサロンを地域でいち早く取り入れる。